
中小企業では、社長が代表取締役と大株主を兼ねている会社が少なくありません。その社長が急に亡くなると、会社を代表する人が不在になり、社長が持っていた株式の議決権もすぐには行使できなくなることがあります。最初に決めるのは、次の代表者、議決権を使う人、当面の資金繰りの3つです。取締役会の有無で違う手順と、2週間・5か月などの期限を順に見ていきます。
会社と社長個人は、法律の上では別の存在です。それでも社長が亡くなると、会社の側で次のことが止まったり、確認が必要になったりします。
| 止まること | 理由 |
|---|---|
| 契約・届出・登記など、会社を代表する行為 | 代表取締役がいなくなる |
| 株主総会での決議 | 社長の株式が、相続人全員の共有になる |
| 金融機関での一部の手続き | 代表者の変更を届け出るまで進まない |
辞任や任期満了と違い、亡くなった役員の職務を当面引き継ぐ人はいません。会社法は、任期満了か辞任で退任した役員にだけ、後任が就くまでの権利義務を残しています。
社長個人の保証債務は、原則として相続の対象になります。会社が社長から借りていたお金も、返済を受ける権利が相続人に移ります。相続人の側の手続きは、行政書士法人トマックの「相続手続き・遺言のご案内」をご覧ください。
社長が急逝したときは、まず登記事項証明書、定款、株主名簿をそろえ、代表者を選ぶ手順と議決権を使う人を確認します。
取締役会のある会社は、取締役会で新しい代表取締役を選びます。取締役が法律や定款の人数を下回ったときは、株主総会で補います。
取締役会のない会社は、定款の定めに従い、取締役の互選や株主総会で選びます。
難しいのは、取締役が社長1人だった会社です。取締役がいなくなるので、株主総会で新しい取締役を選びます。
株主全員が同意すれば、招集の手続きを省いて総会を開けます。社長の株式は、第3章のとおり議決権を使う人を先に決めます。
取締役が欠け、株主総会を招集できないなど、社内の手続きで後任を選べないときは、裁判所に一時取締役を選んでもらう方法もあります。申立先は、本店所在地を管轄する地方裁判所です。
代表取締役が変わったら、2週間以内に変更の登記をします。怠ると100万円以下の過料の対象です。
商業登記の窓口は、県内どこの会社でも各県の地方法務局の本局です。富山県は富山地方法務局、石川県は金沢地方法務局、福井県は福井地方法務局が受け持ちます。
社長の株式は、遺産分割が終わるまで相続人全員の共有です。共有の株式は、原則として権利を使う人を1人決めて会社に通知しないと、議決権を使えません。
遺言で株式を受け取る人が決まっていれば、話は早く進みます。遺言がなければ、相続人の話し合いで決めます。
話し合いが長引くと、役員の選任も決算の承認も止まります。社長がお元気なうちに、遺言で株式の行き先を決めておく意味はここにあります。
定款も確かめます。相続人に株式を会社へ売り渡すよう求められる定めがあると、経営権が思わぬ形で動くことがあります。
出典:e-Gov法令検索「会社法」(第106条・第174条・第300条・第346条・第351条・第868条・第915条・第976条)「民法」(第898条)/富山地方法務局「管轄のご案内」
| 期限 | 手続き |
|---|---|
| 2週間以内 | 代表取締役の変更の登記 |
| 2週間以内 | 建設業:経営業務の管理責任者などの変更の届出 |
| 3か月以内 | 相続放棄(相続人が判断) |
| 相続開始の翌日から5か月を経過する日 | 事業承継税制:後継者が代表者になっている |
| 相続開始の5か月後から8か月後まで | 事業承継税制:県への認定申請 |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納税 |
建設業の会社では、社長が経営業務の管理責任者を兼ねていることがあります。後任がいないと許可の要件を欠き、許可の取消しの対象になります。
個人事業の建設業を相続する場合は、死亡後30日以内の認可申請になります。手順は「建設業のM&A」にまとめています。
自社株に事業承継税制(特例措置)を使うなら、後継者を5か月の期日までに代表者にしておきます。特例承継計画は相続の後に作っても、認定申請の時までに出せば足ります。計画の提出期限は2027年9月30日です。
後継者は、原則として相続開始の直前に役員である必要があります。先代が70歳未満で亡くなった場合などは例外です。
認定申請の窓口は、次の県の担当課です。
税制の期限は「事業承継税制の2つの締切」でも整理しています。
出典:中小企業庁「第一種特例相続認定中小企業者(認定マニュアル第2節)」「法人版事業承継税制(特例措置)」/国土交通省「許可の要件」/富山県「建設業許可申請・変更の手引(抜粋)」/裁判所「相続の放棄の申述」/国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」/富山県・石川県・福井県の事業承継税制のページ(富山・石川・福井)
会社の預金は会社のものです。取引のある金融機関には早めに連絡し、新しい代表者が決まったら変更を届け出ます。
会社が受取人の生命保険は、資金繰りや死亡退職金の原資になります。相続人が受け取った死亡退職金の合計額は、500万円に法定相続人の数を掛けた額まで非課税です。死亡後3年以内に支給額が確定したものが対象です。
借入金の経営者保証は、後継者に当然に引き継がせるものではありません。金融機関には、保証の必要性を改めて検討することが求められています。
代表者と議決権が固まったら、継ぐか、売るかを決めます。富山県の調査で後継者の決定状況を尋ねた設問では、42.6%が「決まっていない」と答えています。
後継者が決まらないまま社長が亡くなると、この判断を相続人が短い期間で下すことになります。選択肢は、親族や社内の人が継ぐ、会社を売る、廃業するの3つです。比べ方は「会社の廃業費用はいくらか」にまとめています。
出典:国税庁「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」/経営者保証に関するガイドライン研究会「事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則」/富山県「令和7年度富山県中小企業事業承継支援アンケート調査結果」
株式会社トマックでは、決算書を拝見して企業価値の目安を無料で算定しています。社長がお元気なうちの備え(遺言・定款・保証の見直し)のご相談もお受けしています。
株式会社トマックは、国のM&A支援機関登録制度に登録しています。富山・高岡・福井の事務所を拠点に、石川県を含む北陸全域へこちらからお伺いします。
▶ 事業承継・M&Aのご相談はこちら(簡易企業価値算定・無料)
※ 株式会社トマックがご相談の窓口になり、提携する士業専門家と連携して進めます。
※ 本記事は2026年10月時点の法令と公表資料にもとづいています。制度の内容や窓口は変わることがありますので、手続きの前に各窓口でご確認ください。
「うちの場合はどうなるのか」を、そのままお電話でお聞きください。
初回のご相談は無料です。秘密は必ず守ります。