
北陸の企業では、ものづくりを担う会社をどう次の代へつなぐかが問われています。石川県は、事業所に占める製造業の割合が全国4位の県です。2024年の能登半島地震と奥能登豪雨は、その事業承継の相談にも影響しました。全国の数字と比べた県の特徴と、県の制度・窓口、被災した会社が気をつける点を整理します。
石川県は、ものづくりの比重が高い県です。全国の数字と比べると、次のようになります。
| 項目(2021年6月) | 石川県 | 全国 |
|---|---|---|
| 事業所に占める製造業の割合 | 11.4%(全国4位) | 8.1% |
| 1事業所当たりの従業者数 | 9.7人 | 11.3人 |
従業者数でも、製造業が11万811人(全産業の20.4%)で最も多い産業です。1事業所当たりの従業者数は、全国より少なくなっています。
県内の事業所の44.0%、従業者の46.5%が金沢市に集まっています。県内の中小企業数は36,839で、そのうち31,827が小規模企業です。
事業承継の動きは、次の章で、県の支援センターの実績を全国と比べて見ていきます。
出典:石川県「令和3年経済センサス‐活動調査 石川県結果概要(速報)」/中小企業庁「都道府県・大都市別企業数(2021年)」
石川県事業承継・引継ぎ支援センターの令和6年度の実績を、全国のセンターの合計と並べます。
| 令和6年度 | 石川県のセンター(目標) | 全国のセンターの合計 |
|---|---|---|
| 譲渡の相談件数 | 96件(130件) | 9,033件 |
| 第三者承継の成約件数 | 26件(29件) | 2,132件 |
| 親族内承継の相談件数 | 106件(114件) | 7,188件 |
| 親族内承継の支援完了件数 | 21件(21件) | 1,695件 |
中小機構の評価報告書は、能登半島地震や奥能登豪雨の影響で、相談件数と成約件数が目標に届かなかったとしています。
一方で、親族内承継の支援完了は目標を達成しました。センターの評価は、A〜Dの4段階で4年ぶりのA評価でした。全国のセンターの成約は、令和7年度に2,265件と過去最多です。
被災した事業者の相談は、県の能登事業者支援センターでも受けています。事業再建の経営相談や、補助金・融資の相談に応じ、能登各地で出張相談会も開いています。
被災した伝統工芸の事業者には、再建の補助金があります。輪島塗など国指定の品目は国の補助金、珠洲焼など県指定の品目は県の補助金の対象です。
出典:中小機構「令和6年度に認定支援機関等が実施した事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書」(表5・センター別評価)「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について」/石川県「能登事業者支援センターの開設について」「石川県伝統工芸事業者再建支援事業費補助金のご案内」
なりわい再建支援補助金などで直した施設・設備は、一定の期間、補助の目的どおりに使う決まりがあります。この期間を「処分制限期間」といいます。
その期間に譲渡・貸付け・取り壊しなどをするときは、事前に知事の承認を受けます。補助金の返納が要る場合もあります。
県の資料は、事業を第三者に引き継ぐ場合や、個人事業を相続した人が続ける場合を、返納が不要となりうる例に挙げています。ただし承認の手続きは要り、引き継いだ人も同じ制限を受けます。
どの形で引き継ぐかを決める前に、県の担当に相談します。手続きには時間がかかることもあります。
自社株について法人版事業承継税制を使う会社には、災害に関する措置があります。災害で一定の被害を受けた会社は、納税猶予の要件の一部が免除・緩和されることがあります。
会社が一定の被害を受け、災害から1年以内に相続で株式を取得した場合は、相続税の納税猶予の要件の一部が不要とされます。
被害の確認には、県知事の確認書が要ります。窓口は、次の章の県の経営支援課です。届出には期限があるため、早めに確かめます。
出典:石川県「石川県なりわい再建支援補助金に関する財産処分について」(令和6年4月)/国税庁「法人版事業承継税制に係る災害等に関する措置の概要」(令和8年7月)
石川県の「事業承継円滑化補助金」は、承継のために専門家を使う費用の一部を補助します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 県内に本社か主たる事業所がある中小企業の事業承継。親族・従業員・第三者・創業予定者への引継ぎ |
| 補助額 | 上限50万円(補助率は小規模事業者2/3、中小企業1/2) |
| 主な対象経費 | 譲渡契約書の作成、登記の委託、買収前の調査、M&Aの仲介手数料など |
| 期間 | 申請は2027年2月1日まで。2027年3月1日までに承継を終えること |
申請の前に、支援センターか県内の商工会・商工会議所から確認書を出してもらいます。地震の影響で確認書を取りにくい場合は、事務局に相談できます。
予算に達すると受付が終わり、補助金は後払いです。受けられる前提にはせず、補助金がない場合の費用でも計画を立てます。
支援センターには「後継者人材バンク」もあります。後継者のいない小規模事業者と、創業を目指す人を引き合わせる仕組みです。
| 窓口 | 所在地 | 電話 | 相談できること |
|---|---|---|---|
| 石川県事業承継・引継ぎ支援センター | 金沢市鞍月2-20 石川県地場産業振興センター新館2F | 076-256-1031 | 第三者への引継ぎ、親族内の承継、後継者人材バンク |
| 石川県よろず支援拠点 | 同新館1F | 076-267-6711 | 経営全般の相談 |
| 石川県産業創出支援機構 経営支援課 | 同新館1F | 076-267-1244 | 事業承継円滑化補助金の申請 |
| 石川県 経営支援課 金融グループ | 金沢市鞍月1丁目1番地 | 076-225-1522 | 事業承継税制の認定 |
| 石川県 能登事業者支援センター | 輪島市三井町洲衛10部11番1(奥能登総合事務所4階) | 0120-262-380 | 被災した事業者の経営相談 |
法人版事業承継税制の特例措置を使うなら、特例承継計画の提出は2027年9月30日までです。株式の贈与・相続の期限は2027年12月31日です。
石川県では、事業承継税制の認定の手続きをGビズIDでオンライン申請できます。期限の全体像は「事業承継税制の2つの締切」で整理しています。
代表者変更などの商業・法人登記は、県内のどの会社も金沢地方法務局の本局が窓口です。
出典:石川県「事業承継円滑化補助金について」「経営承継円滑化法に基づく支援制度」/石川県産業創出支援機構「令和8年度事業承継円滑化補助金」/中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」/金沢地方法務局「管轄のご案内」
被災した会社では、確かめることが1つ増えます。順番は次のとおりです。
国の事業承継・M&A補助金の締切と申請の順番は、「国と北陸3県の事業承継の補助金」にまとめています。子が継がないと分かったときの進め方は、「後継者がいない北陸の会社へ」をご覧ください。
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