
北陸の企業では、「子が継がない」が事業承継の大きな分かれ目になります。たとえば富山県の調査で、後継者が決まっている会社に続柄を尋ねると「息子・娘」が74.5%でした。その子が継がないと分かっても、廃業を決めるのはまだ早い段階です。先に、継がない理由を聞き分け、株と経営を分けて考え、社内と社外の候補を同時に当たります。
同じテーマを別の切り口で、事業承継・M&Aプラットフォーム「バトンズ」にも寄稿しています。
「継がない」と言われた日から考えること──株主と社長を分ける承継と、個人保証の整理(バトンズ)
富山県は2026年4月に、県内の60歳以上の経営者を対象とした事業承継のアンケート結果を公表しました。後継者が決まっていない会社に、その理由を尋ねた設問(回答504件・複数回答)の上位は次のとおりです。
| 後継者が決まっていない理由 | 割合 |
|---|---|
| 適当な後継者(候補者)が見つからない | 37.9% |
| しばらく社長を続けるので、まだ考えていない | 37.7% |
| 息子・娘(親族)に継ぐ意思がない | 31.3% |
このうち「継ぐ意思がない」を、社長の年齢別に見ると次のとおりです。
| 社長の年齢 | 「継ぐ意思がない」の割合 |
|---|---|
| 59歳以下 | 9.4% |
| 60〜64歳 | 26.5% |
| 65〜69歳 | 33.1% |
| 70〜74歳 | 37.8% |
| 75〜79歳 | 50.0% |
| 80歳以上 | 29.4% |
県の報告書は、59歳以下から75〜79歳までは、年齢が高いほどこの割合が高いとまとめています。80歳以上は回答が17件と少ない区分です。
中小企業庁の事業承継ガイドラインは、社長がおおむね60歳になったころに準備を始めることを勧めています。子に意思を確かめるのも、その準備の最初の一歩です。
出典:富山県「令和7年度富山県中小企業事業承継支援アンケート調査結果」(問18・問24)/中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」
同じ調査では、廃業したいと答えた経営者に理由も尋ねています(回答280件・複数回答)。1位は「息子・娘(親族)に継ぐ意思がない」で、43.6%でした。
直近の決算の損益で分けると、違いがはっきり出ます。
| 直近の決算 | いちばん多い廃業の理由 | 割合 |
|---|---|---|
| 黒字(108件) | 息子・娘(親族)に継ぐ意思がない | 44.4% |
| 赤字(134件) | 事業に将来性がない | 48.5% |
利益が出ている会社でも、廃業の理由の1位は、継ぐ人がいないことでした。
黒字の会社では、取引先との関係、従業員の技術や経験、設備などが、事業を引き継ぐ際の価値として評価されることがあります。ただし、実際の企業価値は、収益力や財務状況、事業の将来性などを含めて個別に確認する必要があります。人の問題は、人を探すことで解ける場合があります。廃業と会社譲渡で手元に残る金額の違いについては、別の記事「会社の廃業費用はいくらか」で比較しています。
出典:富山県「令和7年度富山県中小企業事業承継支援アンケート調査結果」(問23)
「継がない」という答えは、一つの意味とは限りません。何を引き受けたくないのかで、次の手が変わります。
| 聞き分けた答え | 次に考えること |
|---|---|
| 社長の仕事はしたくない | 株は子が持ち、経営は別の人に任せる |
| 借入の個人保証を負いたくない | 保証の扱いを、金融機関と先に話す |
| 今の勤め先や暮らしを離れられない | 社内の候補か、第三者への譲渡を探す |
| 株を持つことも望まない | 第三者へ譲り、株を現金に換える |
1つ目の形は、所有と経営を分ける承継です。子は株主として会社に残り、社長は役員や従業員、外から迎えた人が務めます。
ただし、株主が経営に関わらない形は、社長を任せられる人がいることが前提です。役員の選び方や報酬の決め方も、あらかじめ決めておきます。
聞き分けるときは、社長が答えを先回りしないことです。ご本人の口から、何が引っかかっているのかを聞いてください。
事業承継ガイドラインは、経営者保証が後継者にとって課題や障害になり得ると書いています。子が継がない理由の一つに、保証の重さがあるかもしれません。
この点では、2つの仕組みができています。
特則は、後継者との保証契約について、承継の妨げになり得ることを考えて柔軟に判断するよう求めています。
保証を外せるかどうかは、会社の財務の状況と金融機関の判断で決まります。特別保証の要件は、取引のある金融機関か、県の信用保証協会で確かめます。
保証の話を先に整理しておくと、子や社内の候補に打診するときの材料になります。
出典:中小企業庁「事業承継に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則」/中小企業庁「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」
富山県の調査で、第三者への承継について尋ねた設問(回答770件)では「考えていない」が66.1%でした。「適当な候補者がいれば検討したい」は24.7%、「考えている」は9.2%です。
社内の候補と社外の候補は、どちらか一方に絞る必要はありません。社内に打診しながら、社外に相手がいるかを並行して調べられます。
社内の役員や従業員に譲るときは、株を買い取る資金と、前の章の個人保証が論点になります。社外へ譲るときは、会社にいくらの値が付くかから始めます。進め方は事業承継・M&Aのご案内にまとめています。
小さなお店や個人の事業なら、創業を目指す人に引き継ぐ道もあります。富山県事業承継・引継ぎ支援センターの後継者人材バンクは、その引き合わせの仕組みです。相談は無料です。
相談先について尋ねた設問(回答988件)では、普段の相談先は「税理士」が49.3%で1位でした。「役員、従業員」34.3%、「親族」31.0%が続きます。
株式会社トマックへのこれまでのご相談では、「後継者がいない」と来られた方に、それまでの相談先をお尋ねしてきました。多かったのは「誰にも相談していなかった」という回答です。「顧問税理士に相談したものの、具体的な進め方までは決まらなかった」という回答も多くありました。税務だけでなく、後継者探しや第三者への承継まで含めて検討する場面もあります。そのときは、事業承継やM&Aを専門的に扱う支援機関にも早めに相談することが大切です。
北陸3県の事業承継・引継ぎ支援センターは、次の番号で無料の相談を受けています。
子が会社を継がない場合でも、社長が亡くなれば、自社株は相続財産となります。遺言がなければ、相続人による遺産分割の対象となり、複数の相続人に分かれることもあります。株式が分散すると、後に会社を譲渡したり、経営上の意思決定を行ったりする際に調整が難しくなる場合があります。遺言で株式の承継先を定めておく方法については、グループの行政書士法人トマックの相続・遺言のご案内にまとめています。
出典:富山県「令和7年度富山県中小企業事業承継支援アンケート調査結果」(問25・問34)/富山県事業承継・引継ぎ支援センター「後継者人材バンク」
法人版事業承継税制の特例措置を利用する場合、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日です。計画には後継者の氏名などを記載する必要があるため、後継者候補の検討を早めに進めることが重要です。期限の詳しい話は「事業承継税制の2つの締切」にまとめています。
子が継がないことと、会社を残せないことは同じではありません。値打ちを確かめてから決めても遅くはありません。株式会社トマックでは、決算書を拝見して企業価値の目安を無料で算定しています。
株式会社トマックは、富山・高岡・福井の事務所を拠点に、石川県を含む北陸全域へこちらからお伺いします。
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※ 事業承継に伴う登記は司法書士、税務は税理士の業務にあたるため、提携する各士業と連携して進めます。遺言書の作成支援は、グループの行政書士法人トマックが対応します。
※ 本記事は2026年9月時点の法令・制度にもとづいています。制度や窓口は変わることがありますので、お手続きの前にご確認ください。
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